世にも奇妙な物語
映画の特別編

2000/10/19 東宝第1試写室
人気ドラマシリーズの劇場版。4話オムニバス。
飛び抜けて面白い話がないのは残念。 by K. Hattori


 '90年からフジテレビ系で放送されている人気ドラマシリーズ「世にも奇妙な物語」の劇場版。テーマ曲、ストーリーテラーのタモリ、製作・監督・脚本などのスタッフも、基本的にはテレビ版とそっくり同じ。テレビでは1話15分の3本オムニバスという形式だったが、今回の映画版は1話30分弱の物語が4本で構成されている。各エピソードに共通のテーマはない。以下各エピソードについて、個別に感想を記しておく。

 第1話の『雪山』は、飛行機事故で奇跡的に生き延びた4人の男女が、救援を待つ山小屋の中で遭遇した恐怖体験を描いている。監督は『パラサイト・イヴ』『催眠』の落合正幸。自分たちが生き延びるために、ケガをして歩けなくなった1人を置き去りにして殺した4人。小さな山小屋の中で順番に睡眠をとろうとした4人は、やがて小屋の中に自分たちの知らないもう1人の人間がいることを知る。「もう1人いる!」という理屈が、すぐには飲み込めないのが最大の欠点。ここがすぐに納得できれば傑作になった。ビデオを使った演出は『リング』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の影響か。

 第2話の『携帯忠臣蔵』は、山科でだらだらと日和見を決めている大石内蔵助の目の前に、未来から1台の携帯電話が与えられ、しばしば大石の心境をインタビューするという話。監督は『GTO』の鈴木雅之。清水義範の短編小説を、『踊る大捜査線』の君塚良一が脚色している。大石を演じているのは中井貴一。大石を演じるにはちょっと軽い。しかし初めて携帯電話を見た大石が、その操作法を伝授されてあたふたする場面は面白い。最後のオチもよかった。ただそれ以外の場面は、時代劇でもなく現代劇でもないという、やや中途半端なものになってしまったと思う。あとひとひねりほしかった。

 第3話『チェス』は、コンピュータ相手の試合に敗れた元チェスの世界チャンピオンが、奇妙な老人の仕掛ける人間チェスに巻き込まれるというお話。監督はこれが劇場映画デビュー作となる星護。芝居の演出がネチネチしているわりに弱いのと、最後のオチがベタベタに甘いのは気になるが、エピソードのまとまりも悪くないし、1本の短編映画としてまずまず観られる内容。元ネタになった映画が何なのかはすぐわかるが、モチーフをチェス盤にすることで、小さな規模ながらも元ネタに負けない世界を作っていると思う。

 第4話の『結婚シミュレータ』は、これから結婚しようとするカップルが、結婚式場のサービスで自分たちの未来をのぞき見してしまうという話。監督は映画版『白鳥麗子でございます!』の小倉久雄。今回の4つのエピソードの中では、これが一番面白かった。結婚シミュレータというアイデアは、長編映画にするにはちょっと荒唐無稽すぎて陳腐。でもオムニバス映画の中の1本なら、許されてしまうアイデアだと思う。

 特別面白い映画でもないのですが、何人かで観て「どれが面白かった?」と話したりするにはいい映画かも。


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