バーティカル・リミット
(未編集特別映像)

2000/10/18 SPE試写室
本編の試写ではなく、メイキングでもない不思議な映画。
ちょっと不思議なものを見せられました。 by K. Hattori


 12月から正月映画として公開される山岳アクション映画『バーティカル・リミット』の本編が完成する前に、撮影済みのいくつかのシークエンスをつなげた30分の特別映像がマスコミに披露された。未編集と言っても、ひとつひとつのシークエンスはカット割りも音入れもされていて、完成した映画と変わらない。ただし物語のごく一部をつまみ出したものなので、前後の話がつながっていないし、そのシークエンスが物語全体の中でどんな意味を持っているのかはわからない。映画のさわりをチラチラと見せる、30分の予告編みたいなものだ。

 30分の映像で紹介されているのは、おそらく映画の序盤から中盤にかけてだと思う。クリス・オドネル演じる主人公ピーター・ガレットは、ベテラン・クライマーの父とまだ経験の浅い妹アニーの3人でロッククライミングに出かけ、そこで事故に遭遇する。息のあった3人での岩登りは、先行する別のグループが墜落事故を起こしたことで一変。遥か頭上から墜落してきたクライマーたちの巻き添えを食って、ガレット一家も岩場に宙づりになってしまう。この事故で父親を失った兄妹は、心に深い傷を負ったまま疎遠になってしまう。やがて世界的な実業家であり冒険家でもあるエリオット・ヴォーンのK2登攀チームで再会した兄妹だが、頂上アタックに出かけたアニーは雪崩に遭遇してヴォーンたちと共に山腹のクレバスに閉じこめられてしまう。クレバスの上に厚く積み重なった雪のため、内部の遭難者たちは遠からず窒息してしまう。救出ルートを造るには、クレパスの上の雪をニトログリセリンで吹き飛ばすしかない。ピーターは父の友人で今は世捨て人のような生活をしているベテラン登山家の助けを借りて、妹たちを救出するため危険な山に立ち向かう……。たぶんこんな話の展開になるんだと思う。でも30分でわかるのはここまで。

 ヒマラヤ版『恐怖の報酬』とでも言うべき映画で、見せ場は実際に撮影クルーが雪山に登ってのロケーション撮影。中でも爆薬を使って実際に雪崩を起こし、猛然と迫ってくる巨大な雪の塊を真正面から撮影したシーンはすごい迫力。遠隔操作できるカメラを、雪崩の通るであろう場所に設置したのだそうだ。こうした生の素材がいかにすごいものであるのかは、入念に作られた雪山セットがいかにも作り物めいて見えることでも明らか。実際の雪山と室内のセットでは、そもそも光線の量が違う。今回の特別映像の中には、救助隊が雪山にヘリで送り込まれる場面が含まれているが、絵の質感がまったく違うことがすぐわかってしまう。もっともこのシーンは、乱気流の中で無事山に降りられるかというサスペンス描写が主になっているため、画質云々で白けることはない。これは先行する『クリフハンガー』との大きな違いだ。

 監督は『007/ゴールデンアイ』『マスク・オブ・ゾロ』のマーティン・キャンベル。撮影は『コン・エアー』『スター・ウォーズ エピソード1』のデビッド・タッターソル。完成した本編を見るのが楽しみだ。

(原題:Vertical Limit)


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