PARTY7

2000/09/28 メディアボックス試写室
『鮫肌男と桃尻女』の石井克人監督最新作。つまらない。
すべてがチグハグで新鮮味もない。by K. Hattori


 長編映画デビュー作『鮫肌男と桃尻女』をスマッシュ・ヒットさせた、CMディレクター石井克人監督の新作。『鮫肌〜』は今の日本映画に欠けているポップなビジュアルセンスにあふれた快作だったので、今回の映画もものすごく期待したのだが……。久しぶりに期待を裏切られた。『踊る大捜査線 THE MOVIE』に感動して『スペース・トラベラーズ』を観に行ったら、ひどく期待はずれな内容でガッカリしたときと同じか、それ以上の落胆。『踊る〜』の面白さは脚本やキャラクターの面白さだったので、同じ監督でも脚本家が変わったことでパワーダウンしたのも納得できる。でも『鮫肌〜』とこの『PARTY7』は、監督も脚本も出演者も他のスタッフも、ほぼ同じ顔ぶれなんだけどなぁ。それなのにそれなのに、なぜこんなにつまらなくなってしまったんでしょう。

 つまらない理由のひとつは、この映画が『鮫肌男と桃尻女』の焼き直しのようで、あまりユニークに感じられなかったこと。やくざの組織から大金を奪って逃げた若い男が、山奥のホテルに潜伏する。それを負う組織の殺し屋たち。殺し屋のひとりは『鮫肌〜』でも殺し屋を演じた我修院達也だ。彼を送り出すのが島田洋八というところまで同じ。ホテルのオーナーやフロント係は、やたらとエキセントリックな人たちばかり。同じ石井監督の映画だから誰も「マネだ」と言わないけれど、これを他の監督が作ったら『鮫肌男』の露骨なパクリだと言われるでしょう。本人がやっている場合は二番煎じか。

 つまらない第2の理由は、物語の構成が「ホテルの部屋に集まる珍奇な顔ぶれの面々」と「その部屋を覗いているホテルオーナーと親友の息子」に分かれてしまい、観客が物語に没入できないところにある。秘密の覗き部屋にいるのが、原田芳雄と浅野忠信というのも最悪の組み合わせだった。このふたりの演技は水と油。原田芳雄は粘っこい情緒的な演技でシーンをリードしたがる人だし、浅野忠信はその場の空気を丸ごとひっつかむような自然体の演技が持ち味。どちらも素晴らしい俳優だと思うけれど、このふたりは絶対に同じ場面に登場してはならないのです。僕は覗き部屋のシーンが最後までチグハグでぎこちないものに感じられた。

 でもこの映画がつまらなくなった最大の理由は、舞台となったホテルの周辺風景がまったく登場しなかったことにあるのかもしれない。人里離れた野中の一軒宿という感じが、一目でわかる絵がほしかった。山や畑に囲まれ完全に孤立しているホテルの中に、都会から次々にヘンテコリンな人たちがやってくるからこそ、そこではドラマが否応なしに凝縮して行く。そこが一種の「隔離病棟」のようになって、観客の側も「何が起こっても不思議ではない」「何が起きてもお任せします」という投げやりな気持ちになる。この映画に登場する人々の行動がいちいち馬鹿馬鹿しく感じられてしまうのは、彼らの世界が孤立した小さな場所で閉じていないからです。「いい年した大人が……」と最後まで思ってしまいました。


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