スペース カウボーイ

2000/09/14 ワーナー試写室
冷戦時代のパイロットが、冷戦時代の遺物に落とし前をつける。
イーストウッド監督主演の宇宙活劇映画。by K. Hattori


 クリント・イーストウッドの監督主演最新作。アメリカの宇宙開発初期を描いた『ライト・スタッフ』という映画があったが、これはその続編のような映画だ。ロシアの通信衛星がシステムの故障で制御不能になり、このままでは地球に落下してくる。かつてソ連と冷戦を戦ったアメリカだが、今は敵愾心より政治的駆け引きの方が重要。ここでロシアに恩を売っておいて損はないと判断したアメリカは、ロシアに衛星の修理を約束する。故障した衛星にはスカイラブの制御システムがそのまま流用されているのだが(その理由が後の伏線になる)、それを修理できるのはシステムを開発したフランク・コービンただひとり。彼はかつて空軍の優秀なテストパイロットだったが、アメリカ初の宇宙飛行士という名誉をチンパンジーに奪われたという苦い経験を持っている。今回はその苦い思いを返上する好機。フランクは修理を依頼してきたNASAのスタッフに、「40年前の“チーム・ダイダロス”を復活させなければ協力しない」と宣言し、宇宙行きのチケットを手に入れるのだ。

 チーム・ダイダロスのメンバーは、クリント・イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナーといった顔ぶれ。その上官役がジェイムズ・クロムウェル。地上管制官がウィリアム・デベイン。見事にしわくちゃの爺さん連中ばかりです。映画導入部にある40年前のテストフライト風景ではチーム・ダイダロスのメンバーを若い俳優が演じていますが、声だけはイーストウッドやジョーンズなどが吹き変えて役柄の連続感を作り出している。観ているとちゃんと「これが40年たつと誰になるか」ということがわかります。映画前半の見どころは老人たちがいかにしてNASAの過酷な訓練をクリアするかという部分ですが、この撮影にはNASAが全面的に協力し、実際の訓練用設備をそのまま撮影場所として提供している。映画終盤の宇宙シーンはILMが製作。この映画の中にはありとあらゆる映画のテクニックが詰まっている。

 もちろんイーストウッドの映画ですから、これが単なる衛星修理ミッションで終わるはずがない。衛星には何やら人に知られてはまずい秘密があり、それを知っているのはロシア軍の幹部とジェイムズ・クロムウェルだけ。衛星にたどり着いてその秘密を知ったイーストウッドは、降ってわいたように目の前に現れた人類の危機に“チーム・ダイダロス”のメンバーだけで対処しなければならなくなる。これが後半のクライマックスです。

 映画中盤まではストーリーに大きな混乱のない映画ですが、映画がこの終盤に差し掛かると、途端にわかりにくくなってしまう。なぜそのような事態が生じるのか、その事態に対して取った解決策の必然性とその結果予測などが、いちいちわかりにくい。腑に落ちないとか理解できないとかではなく、目の前で起きていることが何を意味しているのかわからなくなってしまう。いつもの強引なイーストウッド流話術も、あまり冴えがありません。

(原題:SPACE COWBOYS)


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