リプレイスメント

2000/09/12 丸の内ピカデリー1(試写会)
スト中の選手の代替要員としてプロの試合に出た素人選手たち。
キアヌ・リーブス主演のフットボール映画。by K. Hattori


 『マトリックス』の後しばらく姿を見せなかったキアヌ・リーブスの新作は、ジーン・ハックマンと共演したフットボール映画。タイトルの『リプレイスメント』というのは、後継者・交替者・代わりの人・代理・取替品・補充兵・交替要員といった意味。シーズンも残すところあと数試合、しかもあと3勝すればプレイオフ出場という大事な時期になって、ワシントン・センチティネルズのフットボール選手たちは年俸アップを求めてストに突入した。オーナーは代替選手を使ってプレイオフに出場することを狙い、かつて往年の名コーチ、ジミー・マクギンティーにチームの采配を全権委任する。ジミーが集めたのは、それぞれ一芸に秀でながらも、フットボールの経験がない素人や、プロとしては欠陥のある個性的なメンバーばかり。その中に、大学時代に名クォーターバックとして名を知られながら、大事な試合で大量失点を招いてプロ入りを断念したジェイン・ファルコがいた……。監督は『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』『ゲッティング・イーブン』『おかしな二人2』のハワード・ドイッチ。脚本は『ランナウェイ』『ラッシュアワー』のビンス・マケウィン。

 狙いとするところはフットボール版『メジャー・リーグ』でしょう。チームリーダーとして申し分ない才能を持ちながら、大事な試合のミスをして自滅するファルコ。俊足だがボールのキャッチが下手くそなクリフォード。瞬発力と突進力は抜群でも、ゲームのルールがよく飲み込めていないベイトマン。キック力抜群ながら、体格貧弱で不良っぽい元サッカー選手のナイジェル。優れたプレイヤーながら、聾唖という障害を持つブライアン。鋼のような肉体で相手の突進を阻むアンドレとジャマール、そして相撲取り出身の日本人フミコ(男です)。こうした個性的メンバーが、経験豊かなコーチとクォーターバックのもとで一丸となり、次々に敵を粉砕して行く。相手チームもスト中で二流選手ばかりなので、こうした寄せ集めチームでも勢いで勝ってしまうわけです。

 映画の序盤は個性あふれる面々が集まったことで生じる葛藤やトラブルを描いて、かなりコミカルな映画になっています。展開は定石通り。残り4試合のうち最初の1試合は負け、その後いろんな事件があってチームが一致団結して、2戦目以降を勝ち進む。主人公に対するイジメもあれば、主人公のロマンスもある。最初は個性的なキャラの寄せ集めでトラブルが絶えなかったチームも、やがて互いの個性を尊重し認め合うチームワークを身につけていく。ただしこうした展開があまりにも定石通りなので、意外性がまったくないのが欠点かもしれません。

 映画の後半はギャグが後退し、かなり真面目なスポーツ映画になっていきます。ここでもう少し代替選手の悲哀のようなものが出ると、映画のクライマックスは勝利に向けてチームが再結束して行く感動と、最後の一試合に悔いのないプレイをしようという悲壮美に彩られて、もっと感動的になったとは思いますけどね。

(原題:THE REPLACEMENTS)


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