ギャラクシー・クエスト

2000/09/12 UIP試写室
SFドラマを事実だと信じるエイリアンが役者に助けを求める。
有名スターが売れないテレビ役者を演じる。by K. Hattori


 '79年から'82年まで足かけ4年4シーズンに渡って放送されたテレビの人気SFシリーズ「ギャラクシー・クエスト」。ドラマの放送は終わって20年近くたっても、熱心なファンは番組を熱狂的に支持し続け、全米各地で定期的にファン大会も開催されている。だがこうした状況も、出演者たちにとっては痛し痒し。番組でのキャラクターがあまりにも定着してしまい、役者としての活躍の場は狭まるばかりだ。番組のコスチュームでファン大会にゲスト出演し、舞台で決めポーズを取り、決めぜりふを口走り、サイン会で愛想笑いを浮かべてオタッキーなファンたちと握手を繰り返す生活の虚しさ。だがそんな彼らを「真のヒーロー」だと信じ込み、助けを求めてきたエイリアンが現れたから大変。凶暴な異星人サリスの侵略にさらされた心優しいサーミアン星人は、卓越した技術力で本物の宇宙基地と本物の宇宙船を準備し、勇気と不屈の闘志を持ち合わせた「ギャラクシー・クエスト」のヒーローたちを待ちかまえる。彼らは宇宙に漏れだした電波で番組を見て、それを歴史ドキュメンタリーと勘違いしていたのだ。

 明らかに「スター・トレック(宇宙大作戦)」とそのファンたちの関係を意識した、パロディ色の強いSF冒険活劇。思い思いのコスプレでファン大会に集まってくる熱心なファンたちの様子にも笑ってしまうし、そこで内心はふてくされながらも笑顔でファンたちに愛嬌を振りまく元出演者たちの姿は哀れであり、同時に滑稽だ。元出演者たちを演じているのは、押しも押されもせぬ映画スターの面々。番組の中で演じたリーダーと自分を同一視し、今でもリーダー風を吹かせて皆に嫌がられるネズミスを演じているのはティム・アレン。元シェイクスピア役者なのに安っぽいカツラで異星人を演じることに屈辱を感じているアレックス役がアラン・リックマン。レギュラーの中の可憐な紅一点として番組に花を添えていたグエン役がシガニー・ウィーバー。ちなみに「ギャラクシー・クエスト」が放送されていたという79年当時、ウィーバーは『エイリアン』に出演してましたっけ。この映画では「落ち目の元テレビスター」を、現役の映画スターが演じているから嫌味にならないし洒落になっている。これが無名キャストだったら、かなり悲惨です。

 映画のテーマは、春に公開された『映画・クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶジャングル』と同じ。テレビ番組の中にだけ存在する架空のヒーローを演じる役者が、自らをフィクションだと知りつつ、自分に声援を送り応援してくれる善良な人々のために戦う。『クレヨンしんちゃん』ではそれが観客の持つ仮面ライダー(アクション仮面)への思い入れと結びつき、『ギャラクシー・クエスト』では「スター・トレック」への思いと重なっていく。テレビ番組や映画が虚構であると知りながら、その中に真実があるから人は感動する。主人公が熱心なファンに助けを求めるとき「番組はすべて本物だ」と宣言するが、その瞬間、映画を見ている観客も熱く燃え上がるのだ。

(原題:GALAXY QUEST)


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