愛ここにありて

2000/09/11 FOX試写室
リリー・ソビエスキーが難病の少女を演じるメロドラマ。
悲しい話のはずなのに、泣けない。by K. Hattori


 世の中には「背の高い女が好きだ!」という男がごまんといる。顔かたちや性格は二の次で、背さえ高ければそれでポイントがアップする。僕も結構その手の傾向があって、できれば自分より背の高い女性とおつき合いしてみたいと思っているが、いまだにそのチャンスがないのは残念。(ちなみに僕は175センチある。)先日ビデオ紹介番組の仕事で一緒になったディレクターと雑談する中で、「背の高い女はいいよね!」という話で意気投合。その中で最近気になる女優の筆頭に上がったのが、『ディープ・インパクト』のリリー・ソビエスキー。

 彼女は『アイズ・ワイド・シャット』で貸衣装屋の娘に扮し、近所のエロオヤジたち相手に売春まがいのことをやってましたっけ。僕はあの場面を観ながら「いった幾らお支払いすればお相手してくれるのかしら?」と思ってしまいました。おっとりした顔立ちに170センチ以上はゆうにあるスラリとした長身、全身の3分の2ぐらいありそうな長い脚。胸があまり大きくないのもいい。まさにデカ女好きの男にはたまらない逸材です。『愛ここにありて』はハリウッドでの彼女の初主演映画ですが、この直後には同じ劇場(有楽町スバル座)で『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』というジェイムズ・アイヴォリー監督作も公開され、こちらにもリリー・ソビエスキーが出演しているらしい。これは楽しみだ。

 そんなわけで大いに期待して観た映画なのですが、正直言ってあまり面白くなかった。田舎町で家族経営の小さな食堂を手伝っているヒロインが、町はずれにある全寮制名門校のおぼっちゃまと、同じ町で育った幼なじみのボーイフレンドの両方に愛される。ところが彼女の身体は、不治の病に蝕まれていた……というメロドラマ。元気いっぱいにスクスク育ったとしか思えないソビエスキーに、不治の病にもめげずに目の前の恋を精一杯生きようとする健気少女を演じさせるというアイデアは悪くない。これがうまくはまれば、最後は涙ボロボロの感動作になったことでしょう。ところがこの映画は、ヒロインの恋の描写がどうにもチグハグなのです。ソビエスキー演じるサマンサの態度が、どうしたって不誠実なものに見えてしまう。なぜ彼女は幼なじみのジャスパーと別れて、おぼっちゃま君のケリーを選ぶのか。その決定的なきっかけが伝わってこないため、彼女が結果としてはふたりの男を手玉に取っているようにも見えてしまう。

 この映画で一番不愉快だったのは、サマンサがジャスパーに別れを告げてケリーと一緒にボストン行きのバスに乗る場面。ジャスパーに謝りながらも、彼女の顔はうっすらと笑っている。本当の恋を成就させようとする、女心の残酷さです。ここは映画の実質的なクライマックス。観客がヒロインに感情移入していれば、この場面は残酷ではありながらも、それを上回る幸福感に包まれた名場面になったはず。ところが僕はここで、残酷さしか感じられなかった。当然、その後のサマンサとケリーのベッドシーンも、いや〜な感じしかしませんでした。

(原題:Here on Earth)


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