十五才
学校IV

2000/09/01 松竹試写室
15才の不登校児が横浜から屋久島までヒッチハイク。
山田監督お得意のロードムービー。by K. Hattori


 平成5年製作の第1作目に始まり、ほぼ2,3年ごとに新作が作られている山田洋次監督の『学校』シリーズ最新作。過去3作ともそれぞれが水準の高い映画になっているシリーズだが、日本の教育危機が叫ばれている中であえて「普通の学校」「普通の子供たち」を描かず、夜間中学、養護学校、職業訓練校など、少し特殊な世界を描いているのは不満だった。山田監督としては、世間から忘れられ顧みられることのない「学校」を通して現代の日本を描きたいという意欲があったのだとは思うが、学級崩壊や切れる子供たち、十代の心の闇といった言葉が新聞紙面をにぎわせていることでもわかるように、今もっとも描かなければならないのは「普通の学校」に通う「普通の子供たち」なのだ。そこで登場したこの最新作は、15才の不登校児を主人公にすることで、山田洋次監督なりに「普通の学校」や「普通の子供たち」に迫ろうとした作品のように思える。

 主人公は15才の川島大介。学校に通っていれば中学3年生だが、彼はここ半年ほどまったく学校に通えない状態が続いている。家に特別何か問題があるわけではない。学校でイジメに遭ったわけでもない。なぜ学校に通えないのかなんて、大介本人にもわからない。でも大介は考える。「なぜ子供は学校に行かなければならないんだろう?」と。大人に聞いても答えは教えてもらえない。自分で考えてもわからない。わからないまま大介は息が詰まりそうな家を出て、ヒッチハイクしながら屋久島を目指す。樹齢7千年という縄文杉をこの目で見てみたい。その木に直接触れてみれば、7千年分の元気をもらえるかもしれない。そんな漠然とした期待感を持っている。

 山田洋次監督が得意とするロードムービーだ。寅さんシリーズは主人公の寅さんが旅に出ればすべてロードムービーだったし、『家族』『幸福の黄色いハンカチ』は典型的なロードムービー、『学校』シリーズでは養護学校を舞台にした2作目がロードムービー調だった。寅さん映画を含めれば、山田洋次監督は日本でもっとも大量のロードムービーを作っている映画作家だろう。得手不得手の問題もあるが、山田監督はロードムービーが好きなんだと思う。好きこそものの上手なれ。今回の映画でも、最初は漠然とした目的しか持たず、いつも周囲に不満顔でふてくされていた主人公が、少しずつ成長して行く様子がうまく描かれている。十五才の大介は、旅の中で何人かの印象的な大人たちに出会う。ある大人から別の大人へとエピソードをリレーして行く部分に、多少都合のよすぎる部分も感じるが、これは鉄道のレールの継ぎ目みたいなもので、乗り越えてしまえばあとはスムーズ。ただ、継ぎ目は幾つもあるんだけど……。

 山田監督のドタバタ喜劇のセンスが、まだまだ冴えているというのが意外な発見。丹波哲郎扮する「バイカルの鉄」と、犬塚弘と桜井センリのクレイジー組が組み合わさった場面で見せる強烈なギャグ。これには大笑い。2時間の映画ですが、最後までたっぷり楽しめます。


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