極道の妻〈おんな〉たち
リベンジ

2000/07/18 東映第1試写室
高島礼子主演の新生シリーズ第3弾はちょっと期待はずれ。
豊原功補のエピソードは中途半端で邪魔だ。by K. Hattori


 岩下志麻から高島礼子に主演がバトンタッチした、新生『極道の妻(おんな)たち』シリーズ第3弾。新シリーズ1作目『赤い殺意』ではヒロイン高島礼子を補佐する共演者にかたせ梨乃を配役するなど、旧シリーズを相当に引きずった中途半端なできだった。しかし2作目の『死んで貰います』では高島礼子を中心にメンバー全体が若返り、高島姐もすっかり貫禄が板について見事な映画になっていた。そして3作目。監督は3作とも関本郁夫だが、脚本は2作目の高田宏治から1作目の中島貞夫に逆戻り。今回は1作目よりはだいぶましだが、2作目の興奮には遠く及ばない凡作になっている。

 新生シリーズの強みは、旧シリーズの岩下志麻では難しかった「恋する姐さん」を前面に押し出せることだと思う。岩下志麻だとそれまでに幾度も大きな修羅場をくぐってきたような貫禄が見えてしまって、好きな男の前でつい女としての素顔を見せたり、男のことで焼き餅を焼いたり、未曾有の危機にうろたえたり怯えたりという「生身の姿」を出しにくい。もちろん旧シリーズでもここぞというところでは岩下志麻が感情の揺れを見せ、それを乗り切って名物の啖呵を切ることになるわけだが、このあたりはシリーズ後半で完全にパターン化していて、本気のリアリティというより、水戸黄門の印籠のようなご存じ路線になっていた。でも高島礼子の新しい姐さんは、まだまだ恋することもできるし、時には小娘のようなか弱さを見せることもできる。女としての弱さと、極道社会で男たちと互角に戦う女という強さの両方があって、はじめて新生『極妻』の意味があるのではないだろうか。そうした点で、前作『死んで貰います』はいいツボを突いていたのだと思う。

 今回の『リベンジ』は高島礼子演じるヒロインの恋心がうまく描け切れておらず、観客の共感を得ることはできないと思う。惚れに惚れた若いやくざが組のために刑務所に入り、泣く泣く彼と別れたヒロイン。彼は「俺など忘れて堅気の男と一緒になれ」と言い残して獄に落ちた。だが10年後に彼が帰ってきたとき、ヒロインは対立するやくざ組織の若頭夫人になっている……。観客が知りたいのは、ヒロインがなぜ若頭の妻になったのかという経緯ではないだろうか。少なくとも僕は気になったぞ。ヒロインの夫への思いを描くことで、やくざな男に惚れてしまう女の悲しみが描けたかもしれないし、別れても忘れがたい男と同じ匂いのする男に惹かれる女の弱さが描けたかもしれないのに、そうしたエピソードは皆無。ヒロインが若頭と一緒になったのは、彼に惚れているから? それとも生活のために仕方なく? あるいは何か彼に恩義を感じている? 理由次第で、クライマックスで見せる彼女の戦いの意味が変わってくるはずだ。

 やくざ組織内の跡目争いといういつもの話だが、火野正平演ずる親分がいかにも暗愚で、田中健演じる若頭が気の毒になってしまう。ここはもっと巧妙に、親分を罠に陥れてほしかった。その方が敵役が憎たらしくなる。


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