フォーエバー・フィーバー

2000/07/15 恵比寿ガーデンシネマ
1970年代のシンガポールに上陸したディスコ旋風!
主人公はコンテストでの優勝を目指す。by K. Hattori


 1970年代のシンガポールを舞台にした、ちょっとアナクロな、それでいていつの時代にも通じる普遍性を持つ青春映画。試写で観て「ぜひとももう一度観たい!」と思っていた映画なので、公開2週目に劇場で観てきました。最初に観たときは映画の要所要所で泣いたり笑ったりしていましたが、2度目の今回はそうした感情移入が控えめになって、「なるほどこれが伏線なのだ」とか「このエピソードがこうつながるのか」などと細部を観ることの方が多かった。

 この映画の魅力は「ニセモノで構成された中に真実がある」という、映画ならではの醍醐味が味わえる点。この映画に登場する『フォーエバー・フィーバー』という映画は『サタデーナイト・フィーバー』を模した映画だし、主演の白スーツの男は明らかにトラボルタを模している。(ただし似ていない。)劇中でかかるビージーズの曲は、オリジナルではなくてカバー。それぞれ本物が使えなかったのはもちろん予算的な面もあるのだろうが、こうしたニセモノやまがい物によって、この映画の独特な雰囲気が作られている。それが最高潮に達するのは、クライマックスのディスコ大会。主人公ペアが踊る場面は、8割ぐらいが別のダンサーによる吹替だぞ。それでも物語のノリで観ているから、ぜんぜんOK!

 この映画は他にも、ニセモノやまがい物がたくさん出てくる。ひょっとしたらそれが、シンガポールという土地の雰囲気なんだろうか。登場人物がしゃべっている英語も、独特の訛りがあって「英語もどき」っぽい。変身願望とうのも、この映画の大きなテーマだ。主人公の妹は英語のロマンス小説を読みふけっては、名前を次々に変える。主人公の弟は優秀な医学生だが、その内面の顔と外見とはまったく別物だ。加えてダンス教室の先生はなぜかインド人。(この先生の標語が最高!)

 1970年代のディスコブームという、特定の世代には懐かしい時代を描いた映画なのかもしれないが、僕自身はこの時代やディスコに深い思い入れはない。僕の周囲にはブルース・リーに夢中の友達も多かったけど(ヌンチャクの持ち込みが禁止になった小学校は全国に無数にあるでしょうね)、僕自身はカンフー映画と無縁だった。でも『フォーエバー・フィーバー』は、ただ懐かしさを売り物にしている映画じゃない。『がんばっていきまっしょい』がやはり1970年代の青春を描き、それでいて現代にも通じる普遍的な物語になっているように、『フォーエバー・フィーバー』も特定の時代を通して現代に通じる物語になっている。何かに夢中になったり、恋をしたり、自分の将来について思い悩んだり……。ファッションや風俗は変わっても、青春時代が持っている本質的な部分はどこも変わらない。

 映画の見せ場は何度か描かれるダンスシーンだが、クライマックスのコンテストより、主人公が初めてディスコに行って踊るソロダンスの方が迫力があった。最後は「それ以上」を期待して、ちょっとはぐらかされた気分。

(原題:FOREVER FEVER)


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