60セカンズ

2000/07/11 イマジカ第1試写室
伝説の車泥棒が弟を救うため一晩で50台の高級車を盗み出す。
主演はニコラス・ケイジ。とにかくカッコイイ。by K. Hattori


 ニコラス・ケイジ演じる主人公メンフィスは、高級車専門の車泥棒としてアメリカ中に名を知られている男。だが彼は6年前、警察に捕らえられることなくあっさりと引退。今は堅気の仕事で地道に食っている。そんな彼のもとに、昔の仲間から連絡が入る。メンフィスの弟キップが車泥棒の仕事でヘマをし、依頼人から殺されそうになっているというのだ。弟を救うため故郷の町に戻ったメンフィスは、わずか数日の内に50台の高級車を盗むという無茶な注文を受けざるを得なくなる。かつての仲間に連絡を取り、対象となる車を探し出し、準備をするとなると、実質的に丸1日で50台の車を盗むという仕事だ。メンフィスが動き出す気配を感じた警察は、彼が車泥棒の仕事に舞い戻ると確信。警察はメンフィスたちを徹底マークしはじめる。

 1974年に製作されたカーアクション映画『バニシング IN 60''』の再映画化だが、設定や物語はオリジナル版をだいぶアレンジしているらしい。製作はジェリー・ブラッカイマー。監督は『カリフォルニア』のドミニク・セナ。タイトルの『60セカンズ』とは、わずか1分で高級車を盗み出す車泥棒たちの華麗なテクニックを指している。(オリジナル版の原題は『GONE IN 60 SECONDS』。“GONE”も“VANISH”も「消える」という意味だ。)今回の映画では前半1時間が状況説明と仲間集めと下準備。後半の1時間が自動車泥棒とカーチェイスになっている。このあたりの時間配分はうまいものだ。

 出演は主演のケイジの他、アンジェリーナ・ジョリー、デルロイ・リンド、ウィル・パットン、ロバート・デュバルなど豪華なもの。ほとんど台詞のない役でフランシス・フィッシャーを登場させるなんて贅沢もします。『シャロウ・グレイブ』『日陰のふたり』『HEART』のクリストファー・エクルストンが悪役を演じ、『カーラの結婚宣言』のジョバンニ・リビージが主人公の弟キップを演じ、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のヴィニー・ジョーンズも登場する。この映画では配役でまったく冒険をしていない。全員が俳優のイメージにピッタリのタイプキャスティングなのです。でもそれがいい。かえって安心して観られます。

 僕は最近ひいきのアンジェリーナ・ジョリーに注目して観ていましたが、主人公の元恋人というこの役も、まさに彼女にはまり役。(3年前ならアシュレイ・ジャッドが演じたような役でしょうね。)でもこの役は、映画の中では完全に添え物です。この映画の中では主人公以外が全員添え物。こんな映画も最近珍しい。でもこの添え物たちも、薄っぺらなキャラクターになっていなくてみんな生き生きしている。

 映画の見どころは細部までこだわった車への思い入れと、クライマックスの壮絶カーチェイス。主人公たちが刑事を交えて車談義をする場面は面白いし、盗みの当日無線で自動車カルトクイズをするのも楽しい。僕は車に乗らない人間ですが、それでも面白く観られました。

(原題:GONE IN SIXTY SECONDS)


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