サウスパーク
無修正映画版

2000/06/16 ワーナー試写室
放送禁止用語や差別ネタが飛び交う過激アニメの劇場版。
日本語字幕には「ボカシ」が入ってます。by K. Hattori


 アメリカのCATVで放送されている超過激アニメ「サウスパーク」の劇場版。日本でもWOWOWで日本語吹替版が放送されているし、ビデオも発売されていますが、僕はどちらも未見。なんだかスゴイらしい、という噂だけは聞いていましたけど、実物を見るのはこれが初めてです。小学生という設定の切り絵風2頭身キャラが、カワイイ顔して「ファック」だの「シット」だの「ビッチ」だの「オマンコ」だの「フェラ」だの口走る様子にはのけぞりますが、テレビではピー音がかぶさるこれらの放送禁止用語も、映画ならそのままフリーパス。下品なカナダ人コメディアンに憤慨したPTAたちがアメリカの世論をあおり、ついにアメリカとカナダが戦争状態になるというストーリー自体は、ジョン・キャンディ主演のコメディ映画『ジョン・キャンディの大進撃』を連想させて新鮮味はない。この映画の面白さは、全体がミュージカル仕立てになっていることだろう。

 とにかく映画が始まった途端に、登場人物たちが歌って歌って歌いまくる。歌の内容が罰当たりで下品だったとしても、歌になってしまえばそれなりにノリで観てしまうから品のなさも気にならない。感心するのはこのミュージカル仕立てというアイデアが単なるギャグとして持ち出されているわけではなく、この映画そのものがミュージカル映画としてかなり完成度の高いものになっていること。サウスパークのPTAたちが反カナダ・キャンペーンを立ち上げ、それが全米に広まって全面戦争になるまでを、たった1曲の歌で済ませてしまうという経済性。登場人物たちのテーマ曲が並行して歌われ、それが重なり合って対位法の効果を生み出という『ウェスト・サイド・ストーリー』をかなり意識したであろう場面。歌詞の内容がどうあれ、僕はこうした「ミュージカル映画ならではの名場面」を観ると、身体の骨が溶けそうになるほど喜んでしまう。ミュージカル映画という枠組みを持つことで、この作品の毒が薄められるわけではないのだが、そこに『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』のような楽しさを感じるのは僕だけではないはずだ。

 下品な言葉がどれだけ連発されようと、こちらはそれらのバーバル・ギャグを字幕翻訳で理解するしかないので、ギャグとしての起爆力は薄くなる。英語でどんなに下品でヤバイことを言っていたとしても、それをそのまま日本語に翻訳するわけにはいかない。日本には日本なりの言語コードというものがあるので、すべてを翻訳はできない。「クロンボ」も「ユダ公」もOKだけど、例えば「cripple」は「身障者」と訳すことしかできないのだ。(ちなみにガーシュインのオペラ「ポーギーとベス」に出てくる主人公ポーギーはcrippleだが、これは通常「いざり」と訳されている。)映画のキャッチコピーは『セリフにも、ボカシいれてません。』だが、翻訳する段階で日本語にボカシが入ってる。まぁそれが、日本の現状なのだからしょうがない。映画としては非常に楽しいし、大いに笑わせてもらいました。

(原題:SOUTH PARK: BIGGER, LONGER & UNCUT)


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