岸和田少年野球団

2000/06/07 サンプルビデオ
中場利一原作の「岸和田少年愚連隊」シリーズ最新作。
少年たちの友情を描いた感動作だ! by K. Hattori


 吉本興業が製作する『岸和田少年愚連隊』シリーズの第4弾。このシリーズは原作と設定が基本的に一緒で、あとは登場する俳優が毎回違うという変わり種の連作シリーズになっている。最初がナインティナイン主演、次が千原兄弟で、今回はココリコ主演。この他にGAGAが製作した『一生、遊んで暮らしたい』や『どつきどつかれ』という映画も「中場利一原作の岸和田もの」という点ではシリーズの一部みたいなものだけれど、これも猿岩石が主演だったり、ネプチューンが主演したりで、出演者たちの顔ぶれはいつもバラバラ。この2作はタイトルに「岸和田少年愚連隊」と入らない番外編のようなもので、作品のグレードとしても吉本製作の映画に比べるとだいぶグレードが落ちると思う。

 しかしこのシリーズ、だんだんと作品の公開規模が小さくなるのが気になる。最初の『岸和田少年愚連隊』は全国公開、次の『岸和田少年愚連隊・血煙り純情篇』と『岸和田少年愚連隊・望郷』は小さなチェーンで公開されて、今回の『岸和田少年野球団』になってついに単館公開。(今回の映画は宣伝予算も少なくて試写が1回しか行われず、僕はサンプルビデオでの鑑賞となりました。)第5弾は同じココリコ主演で望月六郎監督が『岸和田少年愚連隊・超特別篇』を撮るらしいのですが、これは9月にいきなりビデオで発売されてしまいます。

 今回はココリコ主演といっても、画面にはほとんど登場しない。物語の主人公は遠藤章造演じるガスという青年で、彼が少年時代に出会ったひとりの少年との思い出を回想するという形式になっています。田中直樹なんて、今回は1シーンしか登場しないぞ。これで「ココリコ主演」とうたうのは相当に無理がある。ココリコのファンはこれを観たら怒ってしまうかも。でも映画としてはかなりよくできています。監督は真木蔵人主演版『蘇える金狼』や椎名桔平主演のハードボイルド『なで肩の狐』の渡辺武。脚本は岸和田シリーズではお馴染みのNAKA雅MURA。内容的には『望郷』の延長にある少年時代の物語ですが、主人公はチュンバ(リイチ)とコテツのコンビではなく、その悪たれ仲間であるガスになっている。

 隣のクラスに転校してきた色白でおとなしい隆二が同学年の女の子たちのアイドルになったことが、主人公ガスには面白くない。無視していればいいものの、ガスは彼のことが気になって何かとチョッカイを出す。やがて岸和田の大人連中が何を思ったか野球チームを作り、ガスもそのメンバーに。病気で体が弱いという隆二が秘かに野球の練習をしていることを知って、野球が下手くそなガスは彼と一緒に練習を始める。やがて二人は無二の親友になる……。この「いい話」に、大人たちの野球賭博がからんでくるのが岸和田流。

 話は面白いし、子供も大人も芸達者。紅一点の安西ひろこも「マネージャーさま」を好演し、少年たちの汗と埃にまみれた物語に花を添える。映画の最後はよくあるパターンだけど、やっぱり感動してしまいました。


ホームページ
ホームページへ