TOMOKO
もっとも危険な女

2000/05/31 東映第1試写室
大沢在昌の小説を小柳ルミ子主演で映画化。
ぬるい映画。すごくつまらない。by K. Hattori


 若い亭主と離婚したばかりの小柳ルミ子が、『陽炎2』以来4年ぶりにスクリーン復帰したハードボイルド・アクション映画。大沢在昌の小説「女相続人TOMOKO」を、『横浜ばっくれ隊』『麗霆”子』シリーズの中田伸一郎が脚色・監督。米国の大富豪ウェリントン家の御曹司と幸せな結婚生活を送っていたトモコは、突然現れた殺し屋に夫を殺されてしまう。日本に戻った彼女は同じトモコという名を持つホテトル嬢を金で買い、彼女の名前で車や部屋を手に入れる。やがて夫を殺した男たちが彼女の身辺にも近づいてくる。アメリカのCIAと日本の公安警察が、必死でトモコの行方を追っている。じつはウェリントンを襲ったのは、CIAと右翼と軍需産業とで構成される「ピルグリム」と呼ばれるアメリカの秘密組織であり、ウェリントンはそのメンバーに加わることを拒否して抹殺されたのだった……。

 この手の映画が安っぽいのはしょうがないとしても、もう少し話をきちんと整理しておいてほしい。例えば主人公がなぜトモコという名前のホテトル嬢を必要とするのか、僕にはまったくその理由がわからなかった。単に部屋と車を手に入れるだけなら、ホテトル嬢の名前が「トモコ」である必要などないではないか。彼女は偽造パスポートで日本に入国したのだから、免許証でも住民票でも偽造して日本国内に潜伏すればいい。そんなの簡単なことじゃないか。そもそもコードネームと無関係な名前を借りた方が、身を隠すには便利だろうに。それとも彼女は、自分を追う男たちにわざわざ追跡の機会を与えて返り討ちにするのが目的だったのだろうか。

 彼女が日本で何をするつもりだったのかが、そもそもわからない。彼女の動機付け次第で、周囲の人間たちの行動理由も決まってくるのだから、これは明確にしておいてもらいたいのだ。彼女はまず自分の身を守るために姿を消す。次に夫の復讐のために立ち上がる。やがては正義のために「ピルグリム」の存在を暴露しようと決意する。彼女の動機は少しずつ変化しているのだから、変化のきっかけとなるエピソードをひとつずつ抑えて行くだけできちんどドラマができるはずなんだよ。

 死んだウェリントンと殺し屋を同じ役者が二役で演じているのだが、その意味もまったく不明。ウェリントンがじつは死んでいなかったというわけでもないだろうし、ウェリントンの親戚筋(双子とか)でもなさそうだ。ではなに? 殺し屋はわざわざこの一瞬のためだけに整形手術でも受けたんでしょうか? でもウェリントンとトモコのプライベートな会話を録音していたのは誰? やはり彼女はウェリントンに裏切られていたのか? 僕はこのあたりでまったく混乱してしまいました。

 トモコの年齢が何歳に設定されているのかは不明ですが、小柳ルミ子を配役するなら夫をもう少し年輩に設定しないと不自然だよ。ホテトル嬢のトモコがガングロなのも不自然だし、殺し屋がいかにも「殺し屋でございます」という格好なのにも笑っちゃいました。


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