レインディア・ゲーム

2000/05/25 松竹試写室
刑務所から出た男が人違いでカジノ襲撃に巻き込まれる。
話はユニークだが筋運びにメリハリなし。by K. Hattori


 映画を観ている間はハラハラドキドキさせられ、映画を観終わった直後は「そうかなるほど!」と思うのに、1日か2日たつと「でもヘンだよなぁ」と設定や筋運びの矛盾が気になって仕方なくなる映画というのがあります。この『レインディア・ゲーム』もそんな映画の1本です。昨日試写室にいたときはそれなりに楽しんで観ていたようにも思うのですが、今朝になって感想をまとめようとするとどうしても腑に落ちない点がいくつもある。まぁ映画なんてものは観客が客席の椅子に座っている間にどれだけ楽しませるかというものなので、これはこれで構わないのかもしれないけど。でもねぇ……。

 主人公のルーディは車泥棒で5年の刑務所暮らし。同房の親友ニックともどもあと数日でシャバに戻れるという日になって、ニックは刑務所内の暴力沙汰がきっかけで殺されてしまう。ニックは刑務所の中でアシュリーという若い女と文通しており、出所後は彼女と一緒に暮らすことを楽しみにしていたというのに……。ひとりで刑務所から出たルーディは、何も知らず刑務所の前でニックの出所を待つアシュリーの美しさに目を奪われ、自らニックだと名乗って彼女の前に立つ。美しいアシュリーを抱いて夢のような1日を過ごしたルーディだが、翌日になると彼女の兄と名乗る男が数人の仲間を連れて現れる。彼らはルーディをニックだと思いこんでおり、彼が刑務所にはいる前に務めていたカジノを襲撃するので、その手引きをしろと言うのだ。人違いだと言っても、彼らはまったく信用してくれない。自分とアシュリーの命を守るため、ルーディは見たこともないカジノ襲撃計画に嫌々ながらつき合う羽目になってしまう。

 主人公ルーディを演じるのはベン・アフレック。ヒロインのアシュリーを演じるのはシャーリズ・セロン。彼女の兄ガブリエルを演じるのはゲイリー・シニーズ。脚本は『隣人は静かに笑う』『スクリーム3』のアーレン・クルーガー。そして監督は『RONIN』のジョン・フランケンハイマー。悪意とも言えない小さな出来心から、あっと言う間にとんでもない陰謀の渦中に巻き込まれてしまう主人公の冒険を、1時間44分かけてスピーディーに描く。ベン・アフレックはいかにも田舎町のせこい車泥棒という感じが出ているのだが、顔つきが正直者過ぎて身分を偽る部分に説得力があまりない。彼が凶暴な襲撃グループに苦し紛れにいろいろな嘘を付くのがこの映画のひとつのクライマックスなのだから、普段から嘘をつき慣れているような、それでいて要領が悪くて必ずどこかで失敗をするような男という面が見えるとよかったんだけど。シャーリズ・セロンは『サイダーハウス・ルール』の演技が強く印象に残っていたのだが、今回は犯罪の渦中にいる謎めいた女を好演。ゲイリー・シニーズはいつも通りで、特に意外性はなかった。

 話がジグザグに蛇行していきますが、方向転換する部分に切れがたりないような気がする。もう少し緩急のメリハリがあった方が、面白い映画になったかもね。

(原題:REINDEER GAMES)


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