2番目に幸せなこと

2000/05/17 ブエナビスタ試写室
ゲイの男性と親友の女性の間に子供が産まれたら……。
マドンナとルパート・エベレットが主演。by K. Hattori


 『ベスト・フレンズ・ウェディング』でジュリア・ロバーツのゲイの友人役を演じたルパート・エベレットが、今度はマドンナの親友のゲイという役で主演するまたしてもゲイの役で主演するヒューマンドラマ。『ベスト・フレンズ・ウェディング』では親友のロバーツとセックスなきパートナー関係を築こうと誓い合う場面で終わっていたが、この『2番目に幸せなこと』はまるでその後日談のような話です。たぶんそうしたこともあって、このキャスティングが実現したのでしょう。

 ヨガのインストラクターをしているアビーと、造園業を営むロバートは親友同士。ゲイのロバートは現在パートナーのいない独り身。アビーは2年間同棲した相手と破局を迎えて落ち込んでいた。そんなふたりが、ある晩酔った勢いで1度だけセックスしてしまう。ふたりの友情はこれで大きく揺らぐのだが、しばらくたってアビーの妊娠がわかってからは状況が一変する。「子供の父親になってほしい」と言うアビーに、「僕も父親になりたい。でも君の夫にはなれないよ」と答えるロバート。こうしてアビーとロバートは生まれてくる子供の両親として同居生活を始め、子供が産まれてからも子供の理想的な両親として生活していた。ところが恋愛も結婚もとうに諦めていたはずのアビーに突然恋人ができる。最初はアビーの新しい恋に声援を送っていたロバートも、彼女が結婚したいと言い出したことから態度を硬化させる。

 世の中には子供のために結婚を解消しないカップルが多いのです。夫婦間の愛情が冷め、互いにセックスレスになって男と女としてまったく意識しなくなり、さらには家庭以外の場所に恋愛のパートナーができたとしても、子供の父親や母親という立場を捨てられないから離婚しない。現実にはとっくに他人になっている夫婦も、子供の話をしているときだけは親身になって相談し合う。別に仲が悪いわけでもないし冷え切っているわけでもなく、家の中はそれなりに居心地のいい場所になっている。そんな夫婦関係がイメージできる人は、この映画の主人公たちが子供の両親として6年間も生活を共にしてこれたことにリアリティを感じることでしょう。映画では主人公の一方がゲイという設定にしてありますが、これは観客たちの身近にある生々しい現実と映画との間に、少しだけ距離を置くための作戦のように思えます。

 夫婦関係から親子関係が生まれ、子供を媒介にして夫婦は両親になる。そこには姻戚関係と血縁関係がある。これがごく普通の家庭の姿でしょう。しかし世の中では「夫婦関係」がなくても「親子関係」だけが存在する例はザラだし、当然その逆もある。この映画では世間一般が当然だと思っている人間関係に揺さぶりをかける。最終的には「幸せな一家」が離散してしまう話なのに、ちょっとばかりハッピーエンドに見えるのはなぜだろう。結局大切なのは恋愛や結婚や血縁関係ではなくて、信頼と責任と友情なのかもしれない。後半はややもたつく映画ですが、個々のエピソードは身につまされました。

(原題:The Next Best Thing)


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