ウィング・コマンダー

2000/04/07 GAGA試写室
ゲーム・デザイナーが自作ゲームを映画化したSF作品。
ビジュアルはいいけど話にメリハリなし。by K. Hattori


 映画監督になる経路として、脚本家や撮影監督はごくポピュラーなもの。CMやビデオクリップでの実績を武器に、映画の世界に進出してくる人も多い。でもこの映画で監督デビューしたクリス・ロバーツは、そうした今までの監督とはだいぶ違う経歴の持ち主。ロバーツ監督は有名なゲームデザイナーなのです。映画『ウィング・コマンダー』は彼が製作した同名人気ゲームの映画版。映画の中にもさまざまな実写場面があるから、ひょっとしたらロバーツ監督はそうした場面の演出経験があるのかもしれない。日本でもクリエイターとして才能を持った人材がどんどんゲーム業界に入っていますが、これからはゲーム業界から映画に乗り込むロバーツ監督のような例が増えてくるかもしれません。

 僕はゲームをやらないので原作のゲームがどんなものだかまったく知りませんが、映画の方は人間たちがエイリアンと戦う宇宙戦争ものです。主演は『ラストサマー』『シーズ・オール・ザット』のフレディ・プリンゼ・Jr..。士官学校を優秀な成績で卒業した彼は、戦争の最前線にパイロットとして送り込まれ、そこで大活躍をする。彼にはピルグリムと呼ばれる新人類の血が流れており、それがパイロットとしての天性の素質につながっているのだ。映画は宇宙船同士の対艦戦あり、戦闘機同士のドッグファイトありの豪華版。戦闘機が第二次大戦中の艦載機風のデザインになっていたり、『眼下の敵』や『Uボート』に搭乗する巡洋艦と潜水艦の駆け引きに似た場面があるなど、遠い未来の宇宙を舞台にした映画とは思えないような懐かしさがあります。宇宙でもミサイルが飛び、宇宙魚雷が飛び交う様子は、まるでアメリカ版の『宇宙戦艦ヤマト』と言えるかもしれません。新米のパイロットが戦闘の中で成長し、美しい女性上官との間にロマンスが芽生えるのは『トップガン』と同じ。ワープの瞬間に時間が静止するのは『ロスト・イン・スペース』にもあった描写。これはいろんな作品から面白そうな場面を大量に拝借してぶち込んだ、寄せ鍋のような映画なのです。でも残念ながら、面白くないんだよね。

 まず問題なのは、1時間40分の映画すべてが山場に次ぐ山場で構成されていて、ドラマに強弱も緩急もないこと。ひとつひとつの場面も演出がへたで、少しもスリルを感じさせない。話がつまらなくてもアクションの見せ方さえツボにはまってしまえば、それはそれで楽しめるんでしょうけど、この映画は観ている間中ただボンヤリと過ごしてしまえる。少しも手に汗握らないのです。どの場面にも引用もとのオリジナルがあるのだから、そこでどんな演出をしていたのか参考にすればいいのに。

 主人公の性格付けが不明確で、成長ぶりがうまくたどれないのも難点。むしろ相棒のマニアックの方がうまく描けてます。チェッキー・カリョ演じるタガートという男が、次々に肩書きを変えていくのも見ていて興ざめしてしまう。「じつは私は」と正体をばらすのは1回で十分。2回やるとちょっと白けてしまいます。

(原題:WING COMMANDER)


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