ガンダーラ

2000/01/18 シネカノン試写室
未来からの侵略を阻止したひとりの騎士の物語。
ルネ・ラルー最後の長編アニメーション。by K. Hattori


 『ファンタスティック・プラネット』『時の支配者』のルネ・ラルー監督が、'87年に製作した長編アニメーション。“ガンダーラ”とはインドの古代文明とはまったく関係がなく、ましてやゴダイゴの古いヒット曲やテレビドラマ「西遊記」(古いね)ともまったく関係がない異世界のユートピア。高度な科学文明の上に築かれた平和な世界の中で、人々は自然と調和した暮らしを送っている。機械文明は最小限に抑えられ、バイオテクノロジーを利用した農耕と牧畜が行われいている。しかし生活は質素そのもの。科学技術の発展は数百年前に止まり、現在は成熟した技術の上で中世さながらの素朴な生活が営まれている。ちょっと『ナウシカ』的な世界です。

 そのガンダーラが、ある日何者かの攻撃を受ける。戦う術を知らないガンダーラ人の集落は、謎の敵から攻撃を受けて次々に全滅。敵の正体を探り、危機を回避するため、ガンダーラ人は“シル”と呼ばれる若い騎士シルヴァンを派遣。シルは辺境の土地で、遠い昔の遺伝子実験で生まれた奇形人種たちと出会い、彼らの案内で敵の正体を知ることになる。それは遠い未来からやってきた機会人間メタルマンと、彼らを指揮する人工頭脳メタモルフだった。メタモルフはガンダーラ人を捕らえて、メタモルフへと改造していたのだ……。

 日本製のアニメーションを見慣れた目からこの映画を観ると、正直言って内容的にも絵柄的にも見劣りすることおびただしい。物語にメリハリがなく、全体にのっぺりとした印象なのだ。導入部の異世界描写は面白いし、風景やコスチュームなどのデザインもユニークだと思う。ただ、話がよくわからないのだ。奇形種族の予言とシルの行動の整合性にもシックリこなかった。やけに色っぽいヒロインが出てきたと思ったら、映画の中盤以降は彼女も消えてしまう。アニメーション技術そのものはこれが作者の個性なのだし、欧州のアニメは日本のように工業生産的に作られているわけではないから、技術的には拙く見えてもしょうがない。むしろこれが作品の「味」なのだと思って観ることもできる。しかし物語はどうなんだろう。作品的には『ファンタスティック・プラネット』のような世界で『時の支配者』のような時間テーマSFが繰り広げられるわけだが、結局はどっちつかずで中途半端な印象だけが残っているような気がする。

 『ファンタスティック・プラネット』にはロラン・トポールのデッサンがあり、『時の支配者』にはメビウスが参加していた。この『ガンダーラ』には、この前2作に匹敵する魅力的な「絵」がないのかもしれない。『時の支配者』なんてメビウスの絵が動いているというただそれだけで、長編アニメが1本成立しているようなものだ。僕は15年以上前に2,3回観たけど、内容なんてちっとも覚えてない。日本のアニメでもアメリカのアニメでもない独特の色彩感覚と、いくつかの場面だけを鮮明に記憶している程度だ。しかし『ガンダーラ』は、それよりもっと印象が薄い映画だった。

(原題:GANDAHAR)


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