うずまき

2000/01/17 東映第1試写室
伊藤潤二の同名コミックを映画化したものだが、こりゃヒドイ。
こんな映画は商品として欠陥があるぞ。by K. Hattori


 週刊ビッグコミックスピリッツに連載されていた伊藤潤二の同名怪奇コミックを、ミュージック・クリップ出身のHiguchinsky監督(ふざけた名前だ)が映画化したもの。劇場では同じ伊藤潤二原作の映画『富江 replay』と同時上映される。『リング』シリーズのヒットにあやかって企画された東映のホラー2本立てだが、これはちょっと悪ふざけが過ぎるというか、企画が安直というか……。まだ『富江 replay』を観ていないので興行そのものについてはコメントできないが、少なくともこの『うずまき』は映画としては最低だった。つい先日同じ東映で観た『九ノ一金融道』と共に、今年のワースト映画だ。なんでこうなっちゃうのかなぁ……。普通に作れば、もっと面白くなっていいはずなのに。

 渦巻きに呪われた小さな町を舞台にしたホラー映画で、平凡な日常が少しずつ渦巻きに浸食され、人間も物もすべてが渦巻きに飲み込まれていく。異常に気づいた高校生カップルは町を脱出しようとするのだが、両親が渦巻きに殺され、学校でも渦巻きが席巻し始める。やがて町全体がすべて渦巻きに変化してしまう。アイデアとしてはそれだけ。ストーリーもへったくれもない。

 この映画で見どころになるのは、渦巻きの脅威が少しずつ日常に忍び寄り、生活を浸食して行く前半のサスペンスと、渦巻きに飲まれた町がすべて渦巻きに変貌してしまう後半のグロテスクな描写しかない。ところがこの映画、予算がなかったせいだと思うのだが、後半の変身場面がまったく手抜きで、期待はずれもいいところなのだ。原作の見どころも、人間がとぐろを巻いて死ぬとか、長く伸びた舌が渦を巻くとか、カタツムリに変身するなどのグロテスクな描写にあるわけだから、同じことをやるのなら、特殊メイクにお金をかけて徹底的にグロテスクを追求しなければならないはず。映画が1時間半なら最初の1時間に甘ったるい青春ドラマとサスペンスで観客の興味を引っ張っておいて、最後の30分は徹底的にお化け屋敷風の特殊メイクショーを観せてほしい。

 もちろん、それをやるにはお金が足りなかったということなのだろう。しかし映画を作る前に全体の予算配分をしているはずで、お金がないのは最初からわかっていたはずだ。特殊メイクにお金をかけられないのなら、原作を離れてでも別の恐怖を作るべきだった。サスペンス描写に工夫をするとか、変身よりも安上がりな流血描写に路線変更するとか、石井輝男監督の『地獄』のように、チャチな特殊メイクでもいいから物量作戦で有無をいわさぬ迫力を生み出すとか……。

 この映画には、そうした工夫もなければ割り切りもない。シャツの下で盛り上がったカタツムリの殻がシャツを引き裂いて飛び出してくるのを期待しているのに、人間の目玉がカタツムリの触覚のようにせり出してくる場面を期待しているのに、この映画はそれを観せてくれない。ラストシーンのあれはなんじゃ? あまりのしょうもなさに、僕は怒る気持ちさえなくしてしまった。


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